この記事が対象としている方
- 倫理を大学入試で使う受験生
- 定期テストや日常学習で倫理を勉強している高校生
- 哲学や思想に興味はあるけど、難しい話はちょっと苦手……という人
【この記事のキーワード】
アリストテレス、目的論的自然観、質料と形相、中庸、観想的生活、正義、友愛、ポリス的動物、性格的徳、知性的徳
前回はプラトンの解説記事を執筆しました。まだ見ていない方はこちらからどうぞ。

アリストテレスの哲学、あまりにもいろんな考えがあってわかりにくいです……
アリストテレスってどんな人?
アリストテレスは紀元前4世紀の古代ギリシアの哲学者。プラトンの弟子でありながら、師のイデア論とは一線を画し、現実の世界を重視した「現実主義」の立場をとったことで知られています。
- プラトンの弟子だが、考え方は対照的である
- 自然・倫理・政治・論理など、あらゆる分野を研究
- 「万学の祖」と呼ばれる
彼の学問は、後のキリスト教思想や中世哲学にも大きな影響を与えました。著作としては『ニコマコス倫理学』『形而上学』『政治学』などがあります。
自然観:すべてのものには目的がある
アリストテレスの自然観は「目的論的自然観」と呼ばれます。すべての存在は「形相(けいそう)」という本質や目的を持ち、それを実現するために存在しているという考えです。
- 質料(ヒュレー):素材となるもの(例:木材、粘土)
- 形相(エイドス):そのものが目指す本質・目的(例:机の形)
- 可能態:まだ実現されていない状態
- 現実態:目的が実現された状態
たとえば、ドングリ(質料)は「樫の木になる」という目的(形相)をもっており、その可能性(可能態)を内に秘めています。成長によってそれが実現されると現実態になります。
人間の本質とは何だろうか?
アリストテレスは人間を「理性(ロゴス)をもつ動物」と定義しました。人間の魂が持つ理性的な部分をきちんと働かせることが、人間としての善、幸福(エウダイモニア)を実現する道だと考えたのです。そして、理性を純粋に働かせる観想的生活が幸福につながると考えました。なお、観想はテオーリアとも呼びます。
- 魂:人間の本質であり、形相にあたる
- 理性:人間だけが持ち、善悪を判断できる
- 幸福:魂が本来あるべき姿になること
- 観想的生活:純粋に理性を働かせて送る生活
人間はどのように生きるべきなのだろうか?
アリストテレスの倫理学の中心は「徳(アレテー)」です。これは、人間が理性に従って善く生きるための習慣的な力です。これは2種類の徳に分けられます。そしてその徳について、中間的なもの(中庸、メソテース)が良いとしました。
- 性格的徳:勇気・節制・正義など。良い行動を繰り返すことで習得
- 知性的徳:思慮(フロネーシス)など。経験や教育によって育つ
- 中庸(メソテース):過不足を避けた“ちょうどよい”バランスが良い
たとえば「勇気」は、「無謀」と「臆病」の中間にある行動です。このように、極端を避けて適切な行動をとることが「徳ある人」の条件となります。
正義と友愛:人は社会の中で生きる
アリストテレスは「人間は本性上ポリス的動物である」と述べました。つまり、人は社会の中でこそ本当の人間らしさを発揮できるという考え方です。そして正義について、以下のように整理しています。
- 正義:社会でのルールや公平さを守る徳
- 配分的正義:人の功績に応じて名誉や財を配る
- 調整的正義:争いごとで公平になるように調整する
- 友愛(フィリア):お互いの善さに基づく信頼関係
さらに正義だけではなく、友愛があることで、社会は本当に良い方向に向かうというのがアリストテレスの考えです。
まとめ
今回はキーワードを整理してまとめてみましょう。
- 目的論的自然観:すべてのものは目的に向かって存在している
- 質料と形相:物の素材と本質
- 中庸:行きすぎず足りなさすぎない、バランスのとれた行動
- 理性ある魂:人間の本質
- 観想的生活:理性を働かせて真理を楽しむ生き方
- ポリス的動物:人は社会の中でこそ人間らしく生きられる
アリストテレスの考え方は、現実をしっかりと見つめながら、「人間とは何か?」「どう生きるべきか?」を考えたものでした。ソクラテス、プラトンとの区別をしっかりつけていきましょう。
次回はその後のギリシア思想について解説していきます。次の記事でまたお会いしましょう。







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