【ゼロから高校倫理の教科書】人間観

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高校倫理
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この記事が対象としている方

  • 大学入試で倫理を使う受験生
  • 定期テストや日常学習で倫理を勉強している高校生
  • 人間とは何かというテーマを、哲学的に深めたい人

【この記事のキーワード】
ホモ・サピエンス、ホモ・ファーベル、ホモ・ルーデンス、アニマル・シンボリクム、ポリス的動物、考える葦、間柄的存在、類的存在、自由意志

 私たちは「人間とは何か」という問いを、誰もが一度は考えたことがあるでしょう。この問いは、古代から現代に至るまで、哲学者・思想家・科学者によって繰り返し探求されてきました。彼らはそれぞれの視点から人間を定義し、その本質を明らかにしようとしてきたのです。

 さて、今回はこのような人間観について、共通テストで出る形で押さえていきましょう。

目標 ―このレベルの問題を解けるようになればOK!

 以下のような共通テスト形式の問題を解けるようにしましょう。

次の文X~Zは、それぞれある人物の人間観を説明したものである。
X~Zの文が説明している人物の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。(自作)



人間とは、理性に導かれながら自然の秩序を理解し、それを自らの目的に沿って組み替えていく存在である。単に自然に従うのではなく、創意によって環境に働きかけるところに人間の本質を見いだした。


人間は、世界をそのまま受け取るのではなく、象徴や言葉といった媒介を通して現実を意味づける存在である。こうした象徴的活動こそが、文化や歴史を成立させる根底にあると考えた。


人間は、孤立した個ではなく、他者や社会との関係のうちにそのあり方を見出す存在である。個の内面よりも、相互の関係性のなかに人間らしさを見ようとする立場をとった。


① X:リンネ Y:ホイシンガ Z:アリストテレス
② X:リンネ Y:ホイシンガ Z:和辻哲郎
③ X:リンネ Y:カッシーラー Z:アリストテレス
④ X:リンネ Y:カッシーラー Z:和辻哲郎
⑤ X:ベルクソン Y:ホイシンガ Z:アリストテレス
⑥ X:ベルクソン Y:ホイシンガ Z:和辻哲郎
⑦ X:ベルクソン Y:カッシーラー Z:アリストテレス
⑧ X:ベルクソン Y:カッシーラー Z:和辻哲郎

正答はこちらをクリック

正答:⑧

解説は記事の内容をご覧ください!

多様な「人間の定義」

 スウェーデンの博物学者リンネは人間をホモ・サピエンス(英知人)と名づけました。理性をもつ存在こそ人間だという考えです。これに対し、ベルクソンは人間をホモ・ファーベル(工作人)と呼び、目的のために道具をつくり、自然を変える能力に注目しました。

 一方で、オランダの文化史家ホイシンガは、遊びの中にこそ文化の源があるとし、人間をホモ・ルーデンス(遊戯人)と定義しました。また哲学者カッシーラーは、人間をアニマル・シンボリクム(象徴を操る動物)と呼び、言語・宗教・芸術のように「意味」を生み出す力に注目しています

 さらに、アリストテレスは人間を「ポリス的動物」とし、社会の中で生きる存在であるとしました。パスカルは「考える葦」として、人間の弱さと同時に思考する尊厳を語りました。そして日本の哲学者・和辻哲郎は、人間を「間柄的存在」と捉え、他者との関係の中でこそ人間が成立すると説きました。

人間を特徴づける「思考と自由」

 ルネサンス期の思想家ピコ・デラ・ミランドラは、人間を「自由意志により自己を形づくる存在」と捉えました。神や自然によって決められた存在ではなく、自らの意志によって自分を創り出せる――それが人間の尊厳であると考えたのです。また、マルクスは人間を「類的存在」と呼び、他者との協働(労働)を通して社会をつくりあげる存在としました。

 こうして見ると、人間とは単に理性的な存在ではなく、創造し、関わり、考え、自由に生きる存在であることがわかります。これらの多様な定義を通じて、私たちは「人間らしさ」の本質を多面的に理解することができるのです。

まとめ

人物名人間観
リンネホモ・サピエンス(英知人・知性人)― 理性によって自然を認識し、分類する存在。
ベルクソンホモ・ファーベル(工作人)― 目的のために道具を作り、自然を加工して生きる存在。
ホイシンガホモ・ルーデンス(遊戯人)― 遊びを通じて文化を創造する存在。
カッシーラーアニマル・シンボリクム(記号を操る動物)― 言語・神話・宗教・芸術などの象徴体系を築く存在。
アリストテレスポリス的動物(社会的動物)― 共同体の中で生き、善く生きることを追求する存在。
和辻哲郎間柄的存在― 他者との関係(間柄)によって自己を成り立たせる存在。

 次回は「人間の知性」について取り上げます。人間がどのように世界を認知し、学び、思考しているのかについて、解説していきます。次回もお楽しみに!

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