【ゼロから高校倫理の教科書】イスラーム思想

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高校倫理
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この記事が対象としている方

  • 大学入試で倫理を使う受験生
  • 定期テストや日常学習で倫理を勉強している高校生
  • イスラームの始まりや教えをわかりやすく学びたい人

【この記事のキーワード】
ムハンマド、アッラー、啓示、ヒジュラ、クルアーン、六信五行、スンナ派、シーア派、ジハード、偶像崇拝の禁止、啓典の民、イスラーム文明

 前回の記事ではキリスト教哲学を学びましたね。見ていない方はこちら。今回は、それらの流れを受けつぎながらも、新しい形で神への信仰を説いたイスラームについて見ていきましょう。イスラームは単なる「宗教」ではなく、人の生き方や社会のルール全体を大切にする教えです。

イスラームの誕生 ― ムハンマドの教え

 イスラームは7世紀ごろ、アラビア半島の商業都市メッカで生まれました。ムハンマドという人物がその始まりです。彼は誠実な商人として知られていましたが、40歳のとき、天使ガブリエルを通してアッラー(神)の啓示を受けました。「神はただ一人であり、人はその前でみな平等だ」と知ったムハンマドは、人々にその教えを伝え始めます。

 しかし、当時のメッカでは貧しい人を助けることや平等を説く考えは受け入れられず、ムハンマドは迫害されてしまいます。そこで彼は622年に信者たちとともにメディナへ移住しました。これが聖遷(ヒジュラ)と呼ばれ、イスラームの暦の始まりになります。
 メディナでは宗教の指導者であると同時に、政治や軍事のリーダーとしても活動し、630年にはメッカを征服して聖地としました。

唯一の神アッラー ― すべての人は神の前で平等

 イスラームはユダヤ教やキリスト教を同じ神を信じる「啓典の民」として認めています。つまり、イスラームの神アッラーは世界をつくり、すべてを見通す全知全能の神。そして、現世の行いに応じて最後の審判をくだす義の神です。

 また、アッラーは人間の想像をこえた存在なので、神の姿を絵や像にすることはできません。これが偶像崇拝の禁止です。ムハンマドも神ではなく、ただの人間であり、「最後の預言者」とされています。神の前では王も貧しい人も区別はなく、みんな同じように神の愛を受けることができます。

『クルアーン』とイスラームの生活

 ムハンマドが受けた神の言葉はまとめられて『クルアーン(コーラン)』という聖典になりました。これは単なる「お経」のようなものではなく、信仰・道徳・法律・生活のすべてを定める大切な教えです。信者はムハンマドの行い(スンナ)を手本にして生活します。

 イスラーム社会では、信仰と法律が一体になっています。シャリーア(イスラーム法)と呼ばれるルールがあり、祈りや寄付、食事のしかた、結婚や商売のことまで、信仰に基づいて決められています。つまり、イスラームでは「信じること」と「生きること」がつながっているのです。

六信五行 ― 信仰と行動の基本

 イスラームの教えの基本は「六信五行」にまとめられています。これは、信じること(六信)と実際に行うこと(五行)の二本柱です。

六信:アッラー(神)/天使/啓典(聖典)/預言者/来世/予定(神の定め)
五行:
信仰告白…「アッラーのほかに神はなく、ムハンマドは神の使徒である」と告白すること。
礼拝…1日5回、メッカの方角に向かって祈る。
喜捨…貧しい人を助けるためにお金を分け合う。
断食…ラマダーン月に昼間の飲食を控える。
巡礼…一生に一度はメッカを訪れる。

 これらは信仰を行動にうつすことで、神への感謝や共同体の絆を深める大切な実践です。

イスラームの広がりと学問の発展

 ムハンマドの死後、信者たちはカリフという後継者を中心に勢力を広げました。その中で、イスラームは「スンナ派」と「シーア派」という2つの宗派に分かれます。スンナ派は多数派で、共同体の合意を重視し、シーア派はムハンマドの血を引く人を正統な指導者と考えます。

 また、9世紀ごろのバグダードでは「知恵の館」が建てられ、ギリシアの哲学や科学がアラビア語に翻訳されました。そこからイブン=ルシュドなどの学者が登場し、アリストテレス哲学を研究してヨーロッパにも影響を与えました。イスラームは信仰の宗教であると同時に、学問と文化の中心でもあったのです。

学習のヒント

学習のヒント!

  • イスラームは「神への絶対的な服従」を中心とする一神教。
  • 『クルアーン』は信仰と生活の両方のルール。
  • 六信五行がイスラーム信仰の基本。
  • スンナ派とシーア派の違いをおさえよう。
  • イスラーム文明は学問を発展させ、西欧にも影響した。

まとめ

  • 唯一神アッラー:すべての人を平等に見る慈悲深い神。
  • ムハンマド:最後の預言者として啓示を伝えた。
  • クルアーンとシャリーア:信仰と社会を導くルール。
  • 六信五行:信じることと実践することのバランス。
  • イスラーム文明:信仰と学問が結びついた文化。

 イスラームの教えは、「すべての人が神の前で平等」という考えを大切にしています。ムハンマドの教えは、ただ祈るだけでなく、どう生きるか、どう他人を思いやるかを考えさせてくれます。現代の社会を理解するうえでも、イスラームの「平和」と「慈悲」の心はとても重要です。

 次回は、インドの思想について見ていきます。次回もお楽しみに!

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