この記事が対象としている方
- 大学入試で政治経済/公共を使う受験生
- 定期テストや日常学習で「社会契約説」について学んでいる高校生
- ニュースを見て「民主主義ってどうやってできたんだろう?」と疑問に思っている人
【この記事のキーワード】
民主政治、市民革命、絶対王政、ホッブズ、ロック、ルソー、社会契約説、自然権、人民主権、抵抗権
前回は政治と法について勉強しましたね。まだ見ていない方はこちら。

「民主主義」って今では当たり前だけど、どうやって生まれたんだろう?
民主政治のはじまり ― 古代ギリシアから近代へ
「民主政治(デモクラシー)」という言葉は、ギリシア語の「デモス(民衆)」と「クラチア(支配)」に由来します。つまり民衆による政治という意味です。
古代アテネでは市民が集会で直接政治を行いましたが、後には衆愚政治に陥り、理想的な民主政は長く続きませんでした。その後、ヨーロッパでは封建制が広まり、領主や騎士が土地と農民を支配し、民衆に自由はありませんでした。
しかし商工業の発展によって力をつけた市民階級(ブルジョアジー)が、絶対王政に立ち向かいます。こうして市民革命(ブルジョア革命)が起こり、近代的な民主政治が誕生したのです。
- イギリス:清教徒革命 → 名誉革命(1688年)→ 権利章典(1689年)により「国王は君臨すれども統治せず」の原則が確立。
- アメリカ:独立革命(1775〜1783年)でイギリスの支配からの独立を達成。
- フランス:フランス革命(1789〜1799年)で絶対王政を倒し、民主主義国家を目指す。
こうした一連の動きが、現代の「民主主義の原点」を形づくったのです。
社会契約説 ― 「国家はなぜ生まれたのか」
市民革命を理論面で支えたのが社会契約説です。人間はもともと自然状態にあり、自由で平等な存在だと考えます。ところが、この自由を守るために人々は「契約」を結び、国家をつくり、支配に従うことを選んだ――これが社会契約説の基本的な考え方です。
ホッブズ ― 秩序を守るための国家
イギリスの思想家ホッブズは『リヴァイアサン』で、人間の自然状態を「万人の万人に対する闘争」と表現しました。人々は生き延びるために互いに争う存在だと考えたのです。
そこで理性によって人々は契約を結び、自分の権利を国家に譲り渡して安全を確保します。ホッブズにとって国家とは、秩序を守るために必要な絶対的な存在――つまり絶対王政を正当化する理論でした。
ロック ― 自由を守るための政府
一方、ロックは『統治二論』で、人間は生まれながらに生命・自由・財産の自然権を持つと主張しました。人々はこれらを守るために国家をつくり、代表者に政治を委ねます。
もし政府が国民の自然権を侵害したなら、人々はそれに抵抗する権利――抵抗権(革命権)――を持つとしたのです。彼の思想は、アメリカ独立宣言にも強く影響を与えました。
ルソー ― 人民が主権者である
フランスの思想家ルソーは『社会契約論』で、主権は人民にあると唱えました。人間は本来、他人への思いやりをもつ存在ですが、私有財産の発生によって不平等が生じたと考えます。
そのため、人々は契約を結んで「公共の利益(一般意志)」に基づいて国家を運営する――これが人民主権の考え方です。ルソーは、主権は代表や分割ができず、人民が直接政治に参加する直接民主制こそ理想としました。

ホッブズは「秩序重視」、ロックは「自由重視」、ルソーは「人民の力重視」!比べると理解しやすいよ!
学習のヒント
学習のポイント!
- 市民革命は「封建制から民主政治へ」という大転換。年代や国ごとの流れを押さえよう。
- 社会契約説の3人(ホッブズ・ロック・ルソー)は「国家とは何のためにあるか」を比べるのがコツ。
- 社会契約説は共通テストでも頻出!
まとめ
- 民主政治:民衆が政治に参加する仕組み。古代アテネに起源。
- 市民革命:絶対王政を倒し、近代民主主義を誕生させた。
- ホッブズ:秩序を守るための国家(絶対王政支持)
- ロック:自由と自然権を守る政府、抵抗権を主張
- ルソー:一般意志に基づく人民主権・直接民主制
民主政治の原点をたどると、「人間は自由で平等である」という思想に行きつきます。教科書の用語だけでなく、それぞれの思想がどんな社会を目指したのかを意識して学ぶと、現代政治の理解もぐっと深まります。
次回は人権が歴史的にどのように保障されるようになったのかについて解説していきます。次回もお楽しみに!






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