このページを読むとわかること
このページを読むことで、以下のことがわかるように書かれています。
- 学習指導要領は何を決めているものなのか?
学習指導要領ってなんでできたの?
まず、簡潔に学習指導要領をまとめてみましょう。
学習指導要領について、文部科学省は以下のように述べています。
「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。およそ10年に1度、改訂しています。
子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています。
(文部科学省Webページより)
一番肝となるところは、「全国どこの学校でも一定の水準が保てる」ところです。もし、この学習指導要領がなければ、実際の現場で子どもたちが教わる内容は、現場の教職に一任されることになります。
もちろん、ベテランの先生が一任された場合は十分に質が担保された教育を行うことができます。しかしながら、経験の浅い先生が一任された場合、教育の質は担保されにくくなります。
そのような事態を防ぐために、あらかじめ文部科学省は現場で提供される教育の内容について、最低基準を設けています。それが「学習指導要領」というものです。
実は皆さんの好きな科目や嫌いな科目についても、学習指導要領は大まかに内容を決めています。例えば、私が好きだった社会科を採り上げてみましょう。実は、中3の社会科は1年に140回も授業をすることが決められています。普通の学校は35週間分授業がありますから、1週間では4回も社会科を受けていることになります。
もちろんですが、皆さんの受けている授業時間は有限です。そのため、社会科が週4回も授業をやるということは、他の科目はあまり授業ができなくなるといえます。例えば、国語は中1と中2では140回授業をすることが定められていますが、中3では105回に減っています。これは週に4回のペースから週3回のペースに減っているわけです。
学習指導要領って具体的に何を決めているの?
このように授業の時数(このように定められている時数を標準時数と呼びます)が決まっているわけですが、学習指導要領は内容についても(大まかではありますが)定めています。ここでは、高校の地理歴史科を参考にしてみましょう。
(1) 地図や地理情報システムと現代世界
位置や分布などに着目して、課題を追究したり解決したりする活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のような知識及び技能を身に付けること。
(ア) 現代世界の地域構成を示した様々な地図の読図などを基に、方位や時差、日本の位置と領域、国内や国家間の結び付きなどについて理解すること。
高等学校学習指導要領(平成30年告示)地理歴史編より
学習指導要領では、生徒の身につけるべき能力を3つに整理しています。これらは「主体的に学習に取組む態度」「知識・技能」「思考・判断・表現」と呼ばれていますが、それぞれの観点ごとに身につけるよう指導しなければならないことが設定されています。
例えば、この「地図や地理情報システムと現代世界」という単元では、様々な地図を読図して、そこから方位や時差などについて学ぶことが示されています。
(内容上の大きなまとまりを単元と呼びます)
つまり、この単元では上の内容を必ず取り扱わなければならないということになります。
現在の学習指導要領って、変える必要があるの?
ここまで現在の学習指導要領の話をしてきましたが、この学習指導要領はおおよそ10年ごとに改訂されています。そのたびに大きな変更が入っていることも珍しくはありません。
では、なぜ学習指導要領を変えなければならないのでしょうか?その解答として、文部科学省は以下のように説明しています。
学校は、社会と切り離された存在ではなく、社会の中にあります。グローバル化や急速な情報化、技術革新など、社会の変化を見据えて、子供たちがこれから生きていくために必要な資質や能力について見直しを行っています。
(文部科学省Webページより)
私たちが住んでいる社会というものは絶えず変化し続けます。私たちがAIに仕事を奪われるか奪われないかという議論も、もう久しいものではなくなっています。直近では、日本において移民に関する議論も行われています。これまで移民社会といえばヨーロッパの問題であるかのように思われていましたが、もうそのような時代は終わりを告げつつあります。そのような社会に適応するために、10年おきに学習指導要領に改訂が入るのです。
本記事のまとめ
ここまで現在の学習指導要領とはどのようなものなのかを説明していきました。
要点は以下の2つです。
- 学習指導要領は最低基準を定めていて、科目ごとの内容についても定めている
- 社会の変化に対応するため、10年ごとに改訂される
次回は2030年の学習指導要領に関する議論を眺めながら、学習指導要領のことをもっと知っていきましょう。
では、次の記事をお楽しみに!
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